大地の家

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主用途:個人住宅 構造:鉄骨造地下1階、地上2階建て
延床面積:483.54m2 敷地面積:480.97m2
大地を積層する建築

大地を複層化する建築ができないだろうか。 大地にスラブを積層した建築を置くのではく、大地そのものを複層化させるイメージである。

そこでは、光や風、周辺の環境や機能に応じて自由な形態となって現れる大地がスタッキングされていき、内部空間はどの層にあっても交換可能なアタッチメントとして配置される。すべての大地の層には外部環境が定着する余地があり、内外の豊かな関係が紡がれる。スタッキングされた大地の層は、見上げると「空の地形」として重なり合い、下部の空間の質を変化させていく。 このような大地を複層化させるという建築を実現させるために、構造家の萬田隆氏との議論から、自然界の樹木に見られる立体分岐する枝の仕組みを構造システム化し、層間のずれに追随する折れ枝のような柱で支える仕組みがふさわしいのではないかという結論に至った。

この折れ枝のような鋼管は、傾きながら分岐、合流を繰り返し、自由な形状の地形のスタッキングに追随できる構造システムである。同時に、傾いた鋼管が山形(逆V字)に接合することで水平力をすべて負担させることが可能となり、構造壁が不要な自由な大地を実現する。 また、この折れ枝の鋼管はパイプスペースでもあり、各層における大地の上に配置された内部空間となるアタッチメントは、自由に更新可能となる。 従来の壁、柱から解放された各層は、通りの並木や庭の樹木の成長を想定した気積を避けてカーブし、風や光を受け渡すような形態として現れた地形として積層されていく。 この建築は、高層化モデルまでを視野に入れ考察してきた経緯があり、環境をつくり定着させながら成長し、更新されるような都市の風景を思い描いていた部分もある。 

この建築では、街区で大切にしてきた桜並木を含め、すべての層がこの地域の一部として、根付いていける外部環境としての依り代が用意されており、どこにいても文字通り「大地と共にある生活」がある。各層における植物は層間を超えて繋がり、生活もまた繋がっていく。大地に育まれた木の実を求め鳥がやってくる。鳥が運んできた新しい種子が発芽し、花を咲かせ、窓辺を彩る。身近な生活の断片に繰り返される大地のサイクルが人とこの街にとって豊かなものになることを目指した実践である。